【肩こりの原因】肩こりって何?研究結果をもとに肩こりの原因を探る
現在の日本では肩こりで悩まれている方がたくさんいます。
特にデスクワークを仕事とする成人に多くいる印象です。
多くの人を悩ませる肩こりはなぜ起きてしまうのでしょうか?
そんな肩こりの原因を医学的文献をもとに考えていきましょう。
目次
肩こりとは
「日本語大辞典」(講談社)には、
肩こりとは「肩が重苦しく、強ばったような感じになる状態」とあります。
しかし医学的には肩こりの明確な定義はないのです。
医者や整骨院、整体の先生や本や雑誌、テレビなどのメディアでもさまざまな定義づけがが試みられていますが、
固有の症状名であることから、総じて自覚的な表現に基づいている
「後頭下部から後頚部、肩甲背部、肩関節部にかけての筋肉の緊張を中心とする不快感、違和感、鈍痛などの症状、愁訴」
とするものが多いようです。
過去の国内文献では、
前述の部位の「重苦しい、張っている、硬くなっている、痛い感じ、重だるさ、こわばり」
とする表現が用いられていますが、筋硬結などの他覚症状の有無、基礎疾患が関与する程度などは問題とされていないことが多いようです。
肩こりの歴史
肩こりに関する最も古い医学的文献は、瀬川昌耆が1896年に発表した「痃癖(けんぺき)ー特殊肩痛 scapulalgia specifica」です。
ここでは
「痃癖の癖ある婦人が医師に対し、裁縫業に従事すれば、肩はたちまち凝る、張る、痛むと訴える」
としています。
なお、同年に樋口一葉が発表した「われから」には
「ある時は淑女どもに凝る方を叩かせて…」
とあります。
さらに、1910年の夏目漱石の作品「門」には
「頸と頭の継目の少し背中へ寄った局部が石のように凝っていた」
とあります。
これらの記述からは、
肩が凝る表現は、樋口一葉や夏目漱石が生きていた時代である19世紀末から日本で一般的に用いられていたと考えられます。
なお、それ以前の江戸~明治時代には、
「はやうち肩、痃癖、肩はり」
などの名称が用いられていたそうです。
肩こりの現状
令和元年の国民生活基礎調査によれば、
肩こりは女性が訴える症状の第1位(約114名/1,000名)、男性では第2位(約57名4/1,000名)です。
※女性の訴える症状 1位 肩こり 2位 腰痛 3位 手足の関節痛 4位 体がだるい 5位 頭痛
※男性ぼ訴える症状 1位 腰痛 2位 肩こり 3位 鼻がつまる、鼻水 4位 せきやたんがでる 5位 手足の関節痛
肩こりに関して記述した文献は決して多くはなく、その病因や病態が十分に解明されているとは言えません。
このことは、肩こりは病名ではなく症状名であることから、他の疾患に付随する症状として扱われてきました。
つまり、肩こりが辛くて病院に行ったら「肩こり」という疾患名では診断されずに「頚椎症」や「肩頚腕症候群」という疾患名で診断されることが多いようです。
女性看護師の肩こりに関する研究
30歳代の女性看護師を対象として、常に肩こりがある群と全く肩こりのない群に分けての比較を行いました。
結果
肩こりがある群では、現在の仕事を重労働と感じており、頸椎ないしは肩関節の他動運動によってなんらかの症状が誘発され、僧帽筋の筋の硬さが強かった。(※僧帽筋はよく肩がこったと感じて触ってしまう場所です)
一方で、肥満度、なで肩の有無、頸椎椎間板変性の有無では有意差は無かったとしています。
つまり【太っている・やせている】【なで肩】【椎間板の変性の有無】は必ずしも肩こりになってしまう原因ではないようです。
肩こりの身体的影響と精神的影響について【男女差あり】
1,727名の男女を対象とした疫学調査を行いました。
その結果、
肩こりのない群と比較して、肩こりを有する男性では、【身体機能】と【全体的健康感】が国民平均値未満の人が多かった。
肩こりを有する女性では【全体的健康感】と【心の健康】が国民平均値未満の人が多かった。
この結果から、男性と女性の肩こりでは性質が違う可能性があることを指摘しています。
つまり、肩こりが男女ともに【全体的な健康感】に負の影響を与えていることは共通であるが、男性では【身体機能的な面】への影響が強いのに対して、女性では心の健康や精神的健康度といった【精神心理面】への影響が強いようです。